2007.04.18
MH小説『炎の山の狩人たち』vol.10

押してくだちい
かなり久々の小説更新です。
というかBROGそのものの更新自体かなり間隔があいてる・・・
いろいろあるんですよ。
つーことで、小説始まるよ!!!
「続き」をポチッと押しましょうっ♪
今作は溜めた分多少長くなってしまいました;;
というかBROGそのものの更新自体かなり間隔があいてる・・・
いろいろあるんですよ。
つーことで、小説始まるよ!!!
「続き」をポチッと押しましょうっ♪
今作は溜めた分多少長くなってしまいました;;
Chapter2-2『赤い悪魔の噂』
静かな馬車が、車輪の音をゴロゴロと鳴らし、沼へ向かって進み続ける。
もちろんゴーストは喋るはずもなく、本来おしゃべりの多いアイルー族の馬車舵、タマキというネコも喋らない。
ソゥもその雰囲気に負けてか、それとも初めて見る敵に臆してか、緊張の表情を隠せず一言も喋らなかった。
馬車に乗り込んでから初めて口を開いたのは、ジンだった。
前方が開けた構造になっている馬車のその口から身を乗り出した。
「おぃ、たしかタマキといったな。」そよ風がジンの髪をたなびかせた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうニャ・・・・・・」ジンに背を向けたまま、タマキは静かに言った。
「あと何時間くらいで着くかな?」
「・・・・・・・・・・あと・・・・・1時間もかからないニャ・・・・・・」
「そうか。ありがとうな。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
ジンは、ゴーストとの会話になっていない会話を思い出した。そして、同時にある噂を思い出した。
その噂によると、タマキの兄、カザマという猫は、アイルー族の数少ないハンターだったらしい。
兄がハンターをしている頃のタマキは、とても明るい猫としても有名で、皆から可愛がられていた。
タマキの馬車は人気があり、そのにぎやかさは他の村でも知られているほどだった。
タマキの兄カザマは、ある日大怪我をしてハンターを辞めざるを得なくなった。
一緒にクエストに行った人間が、窮地に陥ったカザマを見捨てて逃げたのだという。
しかしタマキは馬車舵の仕事を辞めなかった。辞めることが逃げだと知っていたからだろうか。
それどころか、タマキはカザマが大怪我をした背景となった沼地行きの馬車の舵をしている。
ジンは、瞳の奥に寂しさや悲しさのような不思議な光を持つ者が好きだ。
もしかしたら、ジン自身もそんな光を瞳の奥に持っていたためかもしれない。
空気が沼地の独特な湿った空気に変わったのを、ジンは肌で感じた。
少し進むと、雨が降り出した。さほど強くなかったが、ジンは寒気を感じた。
霧のような雨のむこうに、沼地のベースキャンプが見えてきた。
馬車から降りた3人は、支給品を確認した。やはり応急薬や携帯食料といったものばかりだった。
なぜかいつも支給品を取らないゴーストは、今回も取らなかった。
ソゥは初心者にも役立ち、数多くの敵を相手にする際にも使える『自動マーキング』というスキルのついた
防具を装備していた。感覚が冴え渡り、敵の一挙手一投足を感知できるこのスキルは、とても便利だった。
たとえ気配のないフルフルでもその動きは手に取るように解る・・・はずだった。
「このエリアに居るはずなんすけどねぇ・・・」ソゥはスキルを上手く使いこなせないようだった。
3人は、ジンを先頭に沼地に存在する3つの洞窟のうち最も暗い1つに入っていった。
「ん・・・・?どこだ・・・・・?」ジンの呟きが、そこら中に共鳴した。
そのとき、パチッパチッという静電気のような音が火花を散らして微かに聞こえた。
薄暗い中、赤い影が一瞬見えた、が、ジンとソゥはすぐに見失ってしまった。
ゴーストが、黄色のビンに入った薬を、髑髏の面を少し上げて飲んだ。
『赤い悪魔』そう聞いて、商人なら何を想像するだろうか。一国の王なら、一体何を思い浮かべるのだろう。
そんなことは、ジンにもソゥにも分からない。
しかし、ハンターなら誰でも1度その噂をは耳にし、生涯で1度は対峙するであろう、『赤い悪魔』。
それは、フルフルの亜種のことだった。
まるで烈火の如し茜色の皮膚。それは洞窟のような暗黒の世界でも目立つだろう。
まさしく闇の王、といったところか。
その行動パターンは通常の白いフルフルとさほど変わらないものの、大きく違う点が幾つか挙げられる。
そのひとつが、その身体能力の高さ。
特に怒りによってその強さが極端に変化する。スピード、攻撃力、共に軽々とハンターを死に至らしめる程だ。
そしてもうひとつが、大きな口から発せられる咆哮。
笛の音色にも似た、奇妙な鳴き声。悲鳴のようにも聞こえるその咆哮は、人の鼓膜を軽がると破壊する。
さらに、まるで忍者のような気配のなさ。音もなく真上に忍び寄られ、強酸性の涎を垂らされる事もある。
最後に上げたこの能力、たった今ジンたちを苦しめているのはその能力そのものだった。
「どこだ・・・?どこ行った・・・?」ソゥが独り言のように呟いた。
「おぃ!!上だソゥ!!避けろ!!」ジンの言葉に、すかさずソゥは前転をした。
ギャアアアアアァァオォウゥ!!奇妙な鳴き声と共に、先ほどソゥが居た所へ赤い巨体が降ってきた。
「ひっ・・・・」ソゥはかなりビビっているようで、涙目で冷や汗を額にたくさん浮かべている。
「ちくしょう・・・いつの間にか真上に廻られている・・・」ジンも予想以上の気配のなさに焦りを隠せなかった。
その瞬間、何かきつい臭いが鼻をついた。それは動物の糞の臭いだった。
「うわっ・・・・くせぇっ・・・・・・!!」ソゥが叫んだ。
ギャアアアアアオオオァゥ!!叫ぶソゥの目の前に、赤い物体が勢いよく落ちてきた。
「ひいいぃぃいぃぃ・・・・!!!!」ソゥの悲鳴がフルフルの声より大きく響いた。
どうもこの臭いの正体はゴーストが投げた『こやし玉』という道具だったらしい。
たいていの飛竜は臭いを苦手とする。
例えば2体の飛竜を討伐する際、片方がこちらに気づく前にこれを投げつけ、他のエリアに追い出すという使い方が出来る。
フルフルに至っては、それ以上の効果が期待できる。
洞窟の天井に張り付いた際にこやし玉を投げると、臭いに耐えられず落ちてくることもある。
目が退化し、異常に嗅覚が発達したフルフルにだからこそ、使える道具といってもいいだろう。
尻餅をついたソゥの真横を、ジンが駆け抜けた。
そのまま抜刀斬りで赤フルフルの顔に斬りつけた。ゴーストも後ろから斬りかかる。
フルフルの足、下腹部辺りで水しぶきが勢いよく飛んだ。
ギルドレイピア系のゴーストの双剣は、強力な水を噴き出す。
しかしフルフルはすぐに大きくジャンプし、天井に張り付いてしまった。
「くっ・・・立ち止まらず走り回って錯乱させるしかなさそうだな・・・」ジンはソゥの肩を抱えあげた。
「やっ・・・やばいっすね・・・赤いフルフル・・・正直なめてました・・・」立ち上がったソゥが弱々しく言った。
ジンとソゥの足がピチャピチャと水溜りを踏み、音だけでも2人が走り回っているのは解った。
しかし、ゴーストただ1人は腕を組んだまま物音ひとつたてず立っているだけだった。
薄暗く、髑髏の面もあるため、その表情はもちろん解らなかった。
しかし、その表情はおそらく無表情だろう。目をつぶっているかもしれない。
このような、視力が無視される場所では、音や臭いが戦いの大きな手がかりとなる。
それを物語っているような空間だった。
砂利がなり、水がはじける。ジンとソゥの息遣い、防具の擦れる音。どこからか入る風の音。
そして、フルフルが天井を這う微かな音。ゴーストはその全てを聞き逃してはいなかった。
ゴーストの肩が突然ぴくりと動いた。ゴーストがその場から離れた時だった。
ゴーストが元居た場所の地面が音を立てて溶けはじめた。フルフルの強酸性の涎によるものだった。
ゴーストはまた、ポーチから茶色の玉を取り出し、フルフルの真下に投げ込んだ。
「うっ・・・・くっさ~~・・・・・・」ソゥがまた同じようなことを言った。
洞窟中に充満する強烈な臭いに、フルフルがまたもや天井から降ってきた。
ジンとソゥがそれに気がついて振り向いたとき、二人の顔に血と水が混ざった液体が降りかかってきた。
すでにゴーストはフルフルの不気味な顔を斬りつけていた。
赤い奇妙な顔面に、無数の切り傷が入った。
Chapter2-3『本当の悪魔』に続く
スポンサーサイト
| Home |