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2008.01.27 MH小説『炎の山の狩人たち』vol.61
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押してくだちい
前に小説更新みたいなこと書いてて普通に忘れました。
さーせん

今日はレポート3つ+とある発表原稿1つをあと半日で完成させなきゃいかんのですが

なんもしとらん。

やべー


てか思った

私はどんだけ飽きっぽい性格なんだよ。と。




Last Chapter9-8『劫火の夜想曲』



「兄ちゃん・・・?」

誰かに再び触れられ、ぼやける視界からその者を確認しようとするレイ。

しかし彼女の体に触れたのは兄ではなく、黒い防具に身を包んだ男だった。

「レイ・クロウレン、もう大丈夫です。私はレオンの要請であなた方の救出・手当てをします。」

「・・・・・・・・」

「もう安心してください。ただ、安全な場所まで運ばせていただきますが。」

男は朦朧とするレイの意識の中、静かに微笑んだ。

ただ、レイは自分が助かったことより嬉しいことが1つだけあった。

「レオン君・・・・・・来てくれたんだ・・・」



この世界で、西方と東方、北方と南方ではっきりと分かれたことがある。

それは武器だ。

勿論、今となっては全世界にそれぞれの地方の武器が出回り入り混じり、その武器の発祥地すら知らないハンターが増えているほどだった。

そんな数多の種類を持つ武器。

東西南北の地に、その武器はそれぞれ特徴的な形と発展を見せた。

南方は膂力を敵の骨をも砕くほどの打撃に変える鈍器、所謂ハンマー。

北方は素早い動きと手数で敵を翻弄する双剣や片手剣。

東方では1本の研ぎ澄ませた刀や剣と携える狩人が主流と言えた。

そして西方。彼の地では、王都が盛隆を見せる。そのため発展したのは、王を守る『鉄壁』と『豪槍』だった。

ランス、そして今や全世界に広まったガンランス。

騎士、狩人。どんな職だろうと関係ない。守るべき者が居るならば、それを守ることを誇る。

それがランスやガンランスという武器が発展した理由であり、レオンの信念そのものだった。


「あ、あぁ。何度目かな、レオンに助けてもらったのは。」

落ち度を忘れたふりで誤魔化そうとするジンの顔を見て、レオンが笑う。

「お久しぶりです。2年ぶりですね。まさかジンさんに久しぶりに会うというのに、こんな形になるとは・・・」

こんな状況で、何をのん気に世間話に笑っているのだろう。声だけを聞けばそう思えるかもしれない。

レオンはそんな話をしながらも、右手の盾で金獅子の打撃を受け続けている。それも1歩も下がることなく。

「俺もだ。また助けてもらって、嬉しいやら恥ずかしいやら・・・」


ジンが退き、レオンもガンランスを肩にしまうと、金獅子の隙を見て下がる。

回復薬、強走薬を飲む2人。

入れ替わりで仕掛けたのはゴースト。

肩への一般的な取り付け方から変え、ゴーストはバツの字に2対の双剣を背負う。

まず上の1対を構える。と、言うよりは抜刀と同時に斬りつける。

普段はケープを左半身に付けた状態で戦うことが多い彼も、今回はそのケープは家に置いてきたようで、見た目からして身軽だ。

「驚いたな・・・」

思えばジンはゴーストに驚かされっぱなしだった。

それは赤いフルフルの突進を左腕で受けることに始まり、戦いのたびにゴーストの強さはジンを魅了させ続けた。

そして今も、ジンはこんな状況だというのにいつもの様にゴーストの戦いに見入っていた。

次第にゴーストの迅(はや)さは金獅子のそれに追いつこうとする。

順手・逆手と素早く剣を持ち替え、ゴーストがただ1人使うことの出来る流水、つまり巧妙な力の受け流しを利用し、切創すら作っていく。

“割り込んで与する間すらない”ことにジンは恐怖を覚える。

『人知を超えた戦い』という表現に不平を言う者はいない。たとえ此処にロード・オブ・ハンターがいたとしても、だ。


大振りな爪とその半分に満たぬ番いの剣との咬み合いの中、それは一瞬の中断を迎える。

とんぼ返りと跳躍で距離をとるゴースト。

爪を土に叩きつけ、金獅子は開口、咆哮で火山を揺らす。

その咆哮と同時の怒号。金獅子が纏うように落としたのは無数の雷。

ゴーストは肌で、両手に携えた剣で予期していたのだ。

「微かに起こる、空気そのものの変化。金獅子の力の流動。それを全て見極めていたようですね、ゴーストさんは。」

「とても真似出来そうにないな。あいつはやっぱり強い・・・」

もし此処が人同士の戦場で、ゴーストが敵だったら。ジンはそれを想像するだけで身震いを起こした。



「・・・・・・っ!」

皆がその眼を疑う。

「ゴ・・・」

言葉を発する前に、たった今戦っていた仲間の下へ駆け寄る。

ゴーストの両肩辺りから噴出す鮮血。対して金獅子の両腕に確かに作られた切創からは滴りほどの血しか出ていない。

だれも気がつかなかった。傷は浅いものの、彼はすでに限界に近づいていた。

はっきりと聴こえた、ゴーストが歯をきしませた音。悔しさ。


その隣で土を踏みしめる音。ザッと、固い土が重量感のある赤黒い防具に踏まれる。

「少し休んでろ。いつも独りで戦ってよぉ。俺らもお前以上の戦いしてみせてやんよ!」

ゼロが言う。と、同時に優駿の如く駆ける。

しかし槌は構えていない。

防御という理念そのものを廃した超攻撃型の槌を振るうというのに、彼は武器を構えずに敵に向かうことが出来るはずがない。

「はあぁああぁぁ!!」

勢いのいい声を一声、跳躍で一気に距離を詰める。その両手に持つ物は槌ではない。

「おっ・・・りゃあぁ!!」

ガシャン、という硝子が砕ける音の正体。

己の体を確実に捕えようとする金獅子の拳に、ゼロは左手の指に挟んだ4本の瓶を投げつけ、金獅子の拳そのものを足場にするようにそれを踏み割る。

同時に右手の4本の瓶も金獅子の顔面に投げつける。

勿論金獅子がそれを“攻撃”として認識するにいたることもなく、無意味に顔にぶつかった瓶は割れるだけだった。


ゴーストが作った僅かな切創。そこに流れ込むのは、ゼロが放った瓶から漏れ出した液体。

「あれは・・・レイの弓の瓶か!?」

「へっへ・・・」

可燃性、強酸、毒ビンとは異なる性質を持つ、対象の生命を蝕む猛毒。

取り扱いに慎重を極める、矢1本の威力を底上げする瓶―――狩人の間では『強撃ビン』と呼ばれる代物。

ハンターの模範にはならないであろう、異様な戦法。

その異質さが功を労してか、金獅子の動きが止まる。

「どうだ、ちっとは効いたか?まぁこれもゴーストが傷作ってくれたから・・・」

地味だが効果は大きかった。刃をも十分に通さない毛や皮があろうとも、内部からの襲撃には耐え得ないのだ。

しかし意気揚々としていたゼロは異変に気づき、先程のゴーストと同じように標的から距離をとる。




小さな唸り声が地響きに変わる。

地響きが雷鳴に、咆哮に変わる。

彼の者が正対する『狩人』は、倒すに値する『敵』へと変わる。


―――そして、金獅子の名が具現化される。


黒い毛は全てが黄金色に。

全身には新たに纏った雷霆(らいてい)の鎧は眼に焼きつくほどに。

霹靂(へきれき)は地を掘るほどに。

大気は常に帯電しているようにぴりぴりと。

全てが豹変した。



Last Chapter9-9『禁忌満ちた顎門』 に続く
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