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2007.12.23 MH小説『炎の山の狩人たち』vol.55
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押してくだちい
かなり停滞してしまって申し訳ないです


日記:
最近クレイモアはまってます。月ジャンの。皆も時間とお金に余裕があれば是非狩ってみてくださいw

あと新管理画面が使いにくいと思うのは私だけでしょうか。旧に戻しましたよ。使いにくいし。
やっぱ慣れてる旧のがいいね。これは。



というわけで小説を書きましたつまんないと思いますが。

竜の詩 -raison d'etre- こっちも宜しく!!




Last Chapter9-2『万人が通る道』



ジンは思い出した。

今日はレンコの鳴き声を耳にしていないような気がする、と。

レンコとは、ジンが飼っているレンゴクネコメガエルの名だ。

レンコのほうに目を向け、ジンは少し表情を曇らせた。

飼い始めてからは毎朝、独特の鳴き声を上げていたレンコは、元気のなさそうに顔を埋めていた。

「レンコ・・・?どうした?」

ジンが背中をなでても、あの耳に付く鳴き声は聞こえてこなかった。

「レンコ・・・・・・どうしたんだよ?」

レンコは死んでいるわけでもなかった。かといって、火山に住むカエルだ。突然冬眠するはずも無い。

ジンは自分の手の中が熱くなっていくのを感じた。それは自分の手が熱くなっているのではない。

手のひらに握っていた、炎王龍の鱗が先程よりも熱を帯びていることに気づいたのは、黒い雲が光を遮ろうとしている時だった。



集会所で、いつもの狩人の姿が微塵も見られないのは、ソゥとゼロだった。

「ねぇ~ゼロさん?」

ソゥは度のほとんど入っていない眼鏡をかけ、何やら小説らしい本を片手に首をかしげる。

そしてソゥはゼロが返事をする前に、

「何で、なんでしょうね?」

と訊いた。

そこをすかさず、「何がだよ」と訊き返すゼロ。

2人は集会所に居るだけで、一般人からすればただの客か暇人にしか見えないだろう。

「いや、この本読んでると思うんですけどね・・・。この小説、あのゼラフの小説なんですけど」

ゼラフとは、ハンターをしながら小説家としても一流の腕を持っていた人物だ。

「―――例えばイャンクックとか、リオレウスにしても、小説の中だとハンターの次に“主役”って感じじゃないですか。

 でも、ランゴスタとか、密林のちっこい虫1匹とか、ほんと小説にも登場しないじゃないですか。」

ゼロは、何が言いたいんだよ、と言い、ソゥが言わんとすることを付け足すように続けた。

「お前が言いたいことは、小さな虫1匹の命に価値があるかってことだろ?」

「・・・う~ん・・・・そんな大それたことじゃないけど・・・」

「いや、これはハンターなら誰でも通る道で、誰でも持つ疑問じゃねぇかな、って俺は思うんだよ。

 お前は2年前、あの炎王龍に正対しただろ。

 お前はあの時大した戦力にならなかったとしても――」

ゼロは一度、ソゥの顔を見た。真っ直ぐな目をしていることを確認すると、ゼロは安堵の表情を見せ話を続けた。

「―――大した戦力にならなかったとしても、お前が強大な力に対峙したことは事実だよな。

 そこで、だ。」

「あの時、俺は密林の虫と同じ状況だったってことスか・・・?」

ソゥは実力が無かったことに落ち込んでいるわけではない。

「そうだ。俺だって、あの場に居たらお前と同じだ。

 ジンだって、レイだって、人間は1匹の虫になってただろうな、あの炎王龍の前では。

 だったら、炎王龍に簡単に殺される俺たちの命に、炎王龍からすれば小さすぎる命に、価値はあるか?」

「そ、それは・・・・」

言葉を濁すソゥ。黒ぶちの四角い眼鏡を外すと、机に静かに置く。

「考えていくときりがねぇ。モス1匹だって、ハンターやランポスの食料になる。草1本も虫1匹も同じだ。

 命は平等なんだよ。古龍も、人間も、虫1匹も。」

「でも・・・そう考えると、人間が一番、価値がないんじゃないかな・・・自分を守るためにでも、無駄に命を奪うし・・・」

ソゥの、単純でありながら答えの難しい疑問に、ゼロは動じることはない。

「じゃあ、古龍はよく自分の通り道になった街を壊すぞ?イナゴだって、同じように通り道を食い尽くしちまうぞ?」

答えられないソゥ。

「だから、な。それはハンターになれば、他の動植物を傷つけた瞬間から皆が持つ疑問なんだよ。」

ゼロはゆっくりと席を立ち、背伸びする。

「答えは見つからないこともあんだよ。おれだってまだだし、一生見つからんかも知れんしな。」

「そうっすね・・・」ソゥも立ち上がった。



ゼロとソゥが集会所の扉を開けたときだった。

レンスボロック山の峰から流れてくる黒い雲に気づいたのはソゥだった。

「あ、あんな黒い雲が・・・雨でも・・・・・・」

ソゥの声は一瞬にしてかき消される。

2人の目に焼きついたもの。

ただの雷だった。しかしその轟雷は溶岩を映して紅く燃え、あたりを一瞬に真っ赤に染めた。

「すげ・・・」

ソゥが音の収まりを待ってから、耳を塞いだ手を離す。

「レイたちは・・・確かレンスボロック山に狩猟に行ってたよな・・・?」

ゼロの額から、焦りの雫が静かに流れた。




Last Chapter9-3『カミナリサマ』に続く
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