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2007.11.17 MH小説『炎の山の狩人たち』vol.53
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押してくだちい
小説遅くなりました。

最近、リンクの方々が次々に消えていかれる・・・

そしてリアルでも目的の無い日々に脱力感を、寒さを感じています・・・

テストが22日に範囲発表、12月始めにスタート。

こんな心理的状態でリアルを乗り切れるでしょうか・・・この時期は本当に運が無い上元気も無い・・・

PS 最近、兄がエヴァンゲリオンの漫画を借りてきました。

クラスでは評判のよくない漫画(オタ向けだと名前だけで否定されてます)ですが、かなり面白い・・・

何事も知ってみなきゃワカランね。

難しい話ですが・・・




小説、今回でChapter8が終了。感想ヨロ。

本来これで終わらせてもよかったのですが、私の中で物足りないのであと1Chapterあります。

ハァ・・・FC2 Blog Ranking




Chaoter8-7『敵討ちの槍』




レイの渾身、満身の一撃はあの炎王龍に対しても多大なダメージを与えていた。

力を使い果たしたレイはすでに弓を引き絞る気力も残ってはいなかったが、痛みに炎王龍は絶叫、時間稼ぎにも十分だった。

ゴーストは一瞬――本当に刹那の間だが――ジンのほうを見た。

今度はジンが頷くと、ソゥとレイを手招きしゴーストの後を追う。




ジンが予想していた通り、ゴーストがやってきたのは戦闘街の最後の砦、『撃龍槍』の城門の上だった。

見下ろしていても、炎王龍は大きかった。



「ジン・ロックフィールド。」

「・・・・・?・・・・ゴースト・・・」

ジンは立て続けに起こる初めての事の中で最も驚いただろう。

ゴーストが言葉を発したのだ。

「な・・・んだ?」

「私はザフィリオ・ロックフィールドとユウカ・ロックフィールドに感謝している。」

流暢、と言うより違和感無く東方言語を発する声は低く澄んでいる。

双剣を背に担ぐと左腕に右手を添える。

「私は“霜月の災厄”でこの腕を失い、多くの仲間を失った。」

「やっぱりお前・・・いや、ゴースト、あの災厄の生き残りだったのか。」

ゴーストはふと遠くを眺めるように見渡す。

「私がこの左腕を失ったのはあの災厄の序盤だった。

 お前と同じ18歳の頃だ。

 私を救ってくれたのはザフィリオ・ロックフィールドであり、介抱してくれたのはユウカ・ロックフィールドだった。

 腕を失くし、狩人としての人生を失った私を勇気付けてくれ、狩人として再び大地に立たせてくれたのは彼らだった。

 私は、お前の両親に感謝している。」

ゴーストは撃龍槍の引き金となる通常よりふた回りほど大きなピッケルを担ぐ。

彼らの下には、彼らを今すぐにも殺さんとする炎王龍の姿。

それでもゴーストは続けた。

「災厄にて人間が敗北し、私はザフィリオとユウカという名前だけを頼りに所在を探した。

 そして去年、ザフィリオ・ロックフィールドを訪ねることができた。

 一言、礼を言うために、だ。

 そこで『霜月の災厄』で生き残ったのは私とザフィリオ・ロックフィールドを含め、たった6名だったということを知った。

 しかし・・・

 その6名が全員、ハンターとして再起を危ぶまれる傷を負い、

 ザフィリオ・ロックフィールドはハンターを辞め、ユウカ・ロックフィールドは既にこの世にはいなかった。

 最後に二人の息子のことを知り、せめてもの礼にとその息子の背を押すことを誓った。

 その息子が私と同じようにならないように。」

ジンはゴーストがよく喋るとは思いもしなかったが、そんなことは問題ではなかった。



以前出会ったヘルブラザーズ、キョウとクラインと呼ばれるロード・オブ・ハンター。そしてゴースト。

皆、災厄を生き抜いた者は常人の比にならぬ傷を負い、常人と比にならぬ努力の下で確実な力を得ていた。

それも、ロード・オブ・ハンターである、あるいはそれに匹敵する力だ。



「ゴ、ゴースト・・・もうひとつ、訊きたい事があるんだが・・・・」

ゴーストは真っ直ぐ前を見たままだった。

「お前の本名は・・・・」

「名はアレクサンドル・ガルダ。だが今はゴーストだ。」

「ガルダ・・・」



ガルダ。

蛇を、龍を喰らう鷹。



「ジン・ロックフィールド、私はお前の両親に感謝している。

 私はお前の腕となって最後まで戦おう。」

ジンの顔色を伺うことは、ゴーストはしなかった。

左腕は空の色に似て、それがゆっくりと振りかぶられる。

甲高い音、龍の悲鳴。

確実にジンの目に残ったのは、炎王龍が溶解しながら貫かれてゆくところ。

「・・・・・・・・・終わった・・・」

それでも引き抜かれた“敵討ちの槍”、『撃龍槍』は完全に溶けて、炎王龍の焔の中に消えていった。

ジンの瞳からは、涙は落ちることはなかった。

ジンの心に浮かんだのはただひとつ。

母のことばだった。

『ハンターは竜を殺すおっかない仕事だけど、皆を守る仕事でもあるのよ。

 ジンの周りに誰か困る人がいるなら、ジンにとって守りたい人がいるなら

 全力でその人を救いなさい。そのためには、強くなりなさい。』




そうか、これは俺の敵討ちでもあり、ゴーストの、ガルダの敵討ちでもあったんだな・・・・




城門の上から、ジンは炎王龍との戦いの終焉を見た。

浮岳龍の、数多の狩人の、そして炎王龍の亡骸。

全てが大きく映った。

「母さん・・・俺は、敵討ちできたのか・・・・?」

独り言を空に呟き、ジンは目を細める。

「ジン、ジンの敵討ちはまだ終わってないよ。」

レイが横に座る。

「いや、初めから敵討ちでなんかなかったんだよ。ジンはお母さんの敵討ちのために飛竜や古龍を狩ってたんじゃない。」

ジンの『目標』を否定するような発言。

ジンはレイの顔を見るが、レイの言葉は的を射ていた。

「ジンはこれからもずっと竜を狩って、世界のみんなを守らなきゃいけないんだ。

 それがお母さんへの・・・・」

レイはなぜか泣いていた。

ゼロもだが、レイはジンとハンターとして最も長く付き合い、ジンの悲しみや悔しさを感じていた故だろう。


「そうだな・・・」


ジンはふと、ゴーストがよく『どこか向こうのほう』を見ているのを思い出した。

自分もそれを真似、真っ直ぐ視線を運ぶ。

目の前には開けた空しか見えなかった。



Last Chapter9-1『それぞれの鼓動』に続く。
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