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2007.03.14 自作小説『Andante 歩くような速さで』①
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『波の模様』


悠(ゆう)は、始まって3ヶ月以上も経った高校生活に、まだ不安を感じていた。

自分が中学のときやっていた部活を辞め、明らかにだらけた生活を送っていることも分かっていた。

しかし何もやる気が出ない。入学当初の意気込みはとっくに消えてなくなっていた。

不安と怠惰が入り混じれて、なんともいえない嫌気がさしていた。


悠の友達は、特別多くも少なくも無い。普通の高校生だから、友達も普通。女友達も少なからずいる。

もちろん友達の、「あいつマジかわいいわ!」とか「お前、告れよ」とかいうバカっぽい話はよく聞いた。

悠の中学から、悠と同じ高校に入ったヤツは少なかった。

悠はそのことにも不安があったのだが、入学説明会のときに偶然前後の席になった司や聡一郎をはじめ、すぐに友達は増えた。

悠は悪く言えばノリが悪い、良く言えばツッコミ系で冷めたキャラ。

どこかいつも冷静。笑いはするのだがバカみたいには笑わない。

服も、レザー系のネックレスやダークな服を着ることが多かった。



悠は女の子と話すのが、少しだけ苦手だった。

過去のこともいろいろあったようで、女の子を凝視して話するのが苦手だった。

もちろん、変な意味での『凝視』ではない。

悠が入学して、最初は席は出席番号順。隣は男だった。

そして1度目の定期テストの終了と同時に行われる席替え。

隣は、瑞希(みずき)という女子だった。

ストレートのレングス。ほとんど度の入っていない黒ぶち眼鏡。

レモンティーが好きなのか、朝は放課後によく机の上にはレモンティーが置いてある。

そして瑞希は悠と中学が違ったのだが、初めて話す瑞希とはなぜか不思議と話があった。

悠が話を聞くことが得意、つまり聞き上手な性格だったためだろうか。

それに、悠は40人のクラスでもかなり頭のいいほうだったこともあるだろう。

それに比べ瑞希は、良くもなく悪くもない。頭のよさは普通。クラスで真ん中くらい。


「なぁ、メアド教えてよ。」そういったのは、瑞希だった。

ウチの学校は不思議と校則も軽い。ピアスや髪を染めるのはさすがに禁止だが、女子はよく髪を染めていたほどだ。

もちろん携帯もアリ。ゲーマーのヤツらは授業中ですらゲームをしていることもあった。

それから、悠と瑞希はメールするようになった。

最初は「宿題分からん教えて」とか言うような内容が多かったのだが、しだいにいろんな話をしだした。

そして、夏休みに入る直前、悠は瑞希の電話番号を訊いてみた。意外にも軽く教えてくれた。

「え~?マジ?あいつ3年の○○さんと付き合ってんの?」

「あ、でもそういえば、△△って大学生と付き合いよん?やって車持っおるんやろ?彼氏・・・」



夏休みに入って、悠は俺と一緒に、バスケ部の聡一郎の家に遊びに行った。

バスケ部にもかかわらず、1年の初めですでに幽霊部員。聡一郎はそんなのだけど憎めないヤツだった。

そこで悠は、自分が瑞希のことを気になっていることを司と聡一郎に言った。

「お前なら大丈夫じゃね~?俺、瑞希と中学一緒やけど、アイツはまぁ普通にかわいいよな。」

聡一郎の茶化しに、悠は照れた。



悠はその2週間後、8月も始まったばかりのころ、瑞希と付き合いだした。

中学の頃を通して、2人と付き合った悠だが、そのどちらもがギクシャクしたまま別れていた。

自分がヘたれなことも、悠には分かっていた。


最初に遊んだ日、瑞希は悠にこう訊いた。

最初に遊んだといっても、俺と悠は学生祭の執行委員になったせいで、悠と瑞希がはじめて遊んだのは2学期が始まってからのことだった。

「なぁ、悠は誕生日いつ?」

「へ?あ、12月・・・3日。瑞希はいつなん?」

「ウチ?ウチは4月、4月15日。もうとっくに終わったよ。あ、てかもうすぐやん。」

「あと2ヶ月もあるけど・・・あ、てかなんかくれるん?」

自分でもこんなキャラじゃない、と思いつつ、悠は瑞希の反応を待った。

「へへへ、ウチなぁ、夏休みからバイト始めたんよ。やけん、ホンマなんかあげるわ!」

「ええよ、気ぃつかわんで。」



そして、悠の誕生日の1週間前。

「なんでもええけん遠慮せんといてよ~!」

男が遠慮するのは当たり前だ。悠はどこか恥ずかしくなった。

「え~でも、やっぱええって。気ぃつかわんでええってホンマに。」

「ええけん早、なんか選んでよ!!」


適当に店の中を回りながら、悠は苦悩した。

「じゃ、これで・・・」

悠が選んだのはいかにも安そうなリングだった。

「へ~!?こんなんがええん?」

「あ・・・いや・・・・・・・・・」

「じゃあ、ウチの誕生日にもなんかプレゼントしてよなっ!!」

「うん。分かった。」


悠の指には・・・

銀色に、波の模様が彫られたリング。2千円もしない、どこにでも売っていそうなリング。

悠は、仕方なく選んだはずのそのリングがとてもきれいに見えた。



それから1ヶ月。悠はいろいろなことが身の周りにおき、それを引きずったまま学校でも塞ぎ込んでいた。

俺や聡一郎の「どうしたんや」「大丈夫かよお前」という言葉も、悠には意味が無かった。

そして、瑞希の言葉も・・・



1月に入ってまもなく、2人は別れた。

瑞希は他のヤツに告られ、付き合いだした。

悠はしだいに、前のように振舞うようになった。



別れたけど、それでも、今も2人は友達。

悠の指には、あのときのリングが輝いていた。
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