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2007.08.06 MH小説『炎の山の狩人たち』vol.33
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押してくだちい
最近暑いですね・・・

てか昨日は網戸の外にセミが何故かずっといて
鳴かなかったんですが飛び回って五月蠅い五月蠅い・・・w

まぁ又吉イエスというヤツです^^




Chapter5-4『その名は氷蟹』



思わぬ強敵だった。

左手をかろうじて避ければ、休みもくれず右手に襲われる。

右手を避ければ左手が・・・と、きりのない攻撃の嵐にジンたちは苦戦していた。

フィールド自体が狭いせいもあり、この甲殻種に中央を陣取られたたことが大きな負になっていた。

本来後衛であるはずのレイさえ敵の間近で戦うはめになり、

その上ジンやゼロは勿論ゴーストまでもが力を出し切れずに戦っていた。

「とっ・・・とりあえず・・・はぁッ・・はぁッ・・一度安全なところまで・・逃げようぜ!!」

「うんっ・・・・絶対・・逃げたほうがいいよ・・っ!」

レイの言葉を最後に、4人は同時に攻撃の手を止める。

皆、逃げ足は速かった。

でもそれはハンターとして恥じるようなことではない。

そんなことを恥じていたらハンターなど務まらないのだ。

命のやり取りの中でこそ、戦うこと、そして逃げることの重みは大きい。



天井から落ちた水が首筋にかかり、レイは肩をびくッと震わせた。

「はぁ・・・・」

皆が揃って大きなため息をつき、息を整える。

「そうだ!ジン、怪我・・・大丈夫!?」

「あぁ、途中で回復薬を飲んだ。だから大丈夫だ。」

ジンの額や腕の傷は、もう血が止まり、額にはすでに薄いかさぶたができていた。

「にしてもアレ、なんなんだよ!?」

ゼロがどこか悔しそうに言いながら、ポーチからモンスターリストを取り出す。


モンスターリストとは、自分が討伐もしくは捕獲したモンスターや、

まれに報告された古龍などの情報を載せた、ハンターには欠かせない代物だ。

もちろん、上位・上級のハンターほどリストの情報は豊富で、

逆に言えばモンスターリストが分厚いハンターほど腕が達つ、歴戦のハンターだと言える。


「くそっ!載ってるわけねぇ!初めて見たんだ、あんなヤツ!!」

ゼロがたいしたことない、という訳ではない。

ボルカ村のハンターなら、雪山に行くことは必然的に少なくなる、ただそれだけの理由だった。

「・・・・・・・・・・・・・・」

そのゼロの目の前に、黒いカバーのモンスターリストが差し出される。

ゴーストの手だった。

「え?ゴーストさん、もしかして知ってるの!?」

レイの言葉にも、もちろんゴーストは返答しない。


ジンは思った。

ゴーストはあのドドブランゴの死骸を見たときから分かっていたのではないのか?

ゴーストがあまりにも不思議な人物であることは分かっていたが、ゴーストの腕は確かだ。

しかもボルカ村出身ではない。そもそも双剣は北方で生まれた武器だ。

そしてもう一つ、ゴーストが北方出身であることを決定付ける、大きな要因。

ゴーストのモンスターリストには、東方言語の他に、北方独特の文字が書かれていたのだ。


「へぇ~・・・タイロウヤザミ・・・って言うんだ~。」

レイが感心した口調で言う。

ジンも隣から覗く。

「甲殻種・・・タイロウヤザミか・・・」


大型の甲殻種、タイロウヤザミ。

雪山に生息し、背にはドドブランゴの頭殻を背負う。

ダイミョウザザミ等、一般的な甲殻種とは違い、全身の太い毛やエビのような尻尾を持つ。

またその攻撃方法、生息地等から氷蟹とも呼称される。

左右で非対称の鋏を携え、その攻撃も左右で異なる。

生息数は北方でも減少しており、稀少種として登録されている(M.H.521、生物観測所)


ジンはモンスターリストに書かれていた通りに読んだ。

「ゴーストはこのカード持ってるってことは戦ったことあるわけだけど・・・」

ジンはゼロとレイの顔を見る。

2人揃って、首を横に振る。ジンもそれを見るなり無言のまま同じように首を振った。

「ま、大丈夫じゃねぇの?ダイミョウとドドブランゴを合わせたような感じじゃねぇ?」

「そうだといいがな」

ジンは立ち上がりざまに小さな笑みを浮かべ、呟いた。



―――雪山、山頂付近。

空気を裂くような吹き抜ける音が、風の中に流れてゆく。

先程、すぐに“巣”へ戻っては見たものの、すでにタイロウヤザミの姿はなかった。

そこでジンたちはまた『千里眼の薬』を頼りに、山頂まで登ったのだ。

「周りに注意してろよ・・・またいつ来るか分からない・・・」

ジンは何かを牽制するように手を広げ、注意深く足を進める。


ジンが気づいたとき、それはもう遅かったのだろう。

ジンの足元に巨体が現れ、ジンの体は吹き飛ばされる。

「う・・・・・・」

足元は雪といえど、叩きつけられればダメージも大きい。

姿を現した淡い緑の甲殻種、氷蟹タイロウヤザミ。


一つ、大きな風が吹きつけたときだった。

タイロウヤザミは、立ち上がろうとするジンに標的を絞る。

見た目通り、エビのように腹を曲げ、雪の塊を作る。

その次の行動はジンは勿論、皆簡単に予想できた。

片足が深く雪にはまり、身動きできないジン。


ジンに、ジンの体よりも巨大な雪塊が投げつけられる。

直撃を覚悟し、両腕で頭をかばう。


ドォン・・・!!!!


鳴り響いた音の後に、また一つの風が吹き抜けていった。

ジンの前に立つは、髑髏の面、そして拳を作られた鋼の腕。

ゴーストはその精錬された金属についた雪塊を払い落とした。

背にはそれと同じような色を持った、一対の羽が輝いた。



Chapter5-5『珍種・苦戦の雪山』に続く
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