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2007.07.31 MH小説『炎の山の狩人たち』vol.31
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押してくだちい
本日は更新量多いですが小説も載せます
手短ですが続きより本編です。



Chapter5-2『雪獅子いずこ』


「さっむ~~・・・」

レイが震えながら手を擦る。

「おら、行くぞ!こんなんで寒いとか言ってたら頂上じゃ凍死しちまうぞ。」

ゼロがレイの肩を押す。

うわっとと、とレイは滑りそうになる。

それもそのはず、ここは全てが凍ってしまったような錯覚にとらわれるほどの場所だった。

「あたし、雪山ってこれが3度目だよ~」

カタカタと歯を鳴らしながらレイが呟く。

「俺だってまだ10回も来たことがないさ。」

ジンは喋りながらふと自分の足元を見た。

分厚く透明な氷が地面の上に重なっていて、まるで空中を歩いているようだった。

「この氷柱はいつ見ても綺麗だよね~」

いくらか歩いて視界が開けたとき、そこには巨大な氷柱が天井から降りていた。

龍が凍りついてしまったような、と例えるべきだろうか。

何百年という月日をかけ、1滴1滴の水が作り出した“龍”だった。

よく見ると天井は無いようで、氷そのものが天を塞いでいる。

氷を通して入った光が洞窟中を照らし、神々しささえ覚えるほどだった。

「ふむ・・・俺のハンマーでも一生かかっても壊せないだろうな、これは。」

「壊しちゃだめだよ!!まぁ、兄貴じゃ無理だろうけどね」

兄をからかうレイに、その兄は不思議と言い返さずに前を見ているだけだった。

歯をカタカタと鳴らす。寒さにゼロとレイは震えていた。

「うぅ・・・我慢してたけどやっぱ飲むか・・・レイ、お前も飲んどけ。」

ジンはそうだ、と頷く。

ジンは洞窟に入る前にホットドリンクを飲んでいたので、寒いということはなかった。

ゴーストも見る限り寒そうな雰囲気は無いのだが、いつ飲んだのかは誰も分からない。

いつものことだが、ゴーストは顔を知られたくないためか、回復薬などを口にするのを誰も見たものはいない。

ゴーストほどの腕なら回復薬なんかいらないだろうがな、とジンは心の中で呟いた。

ゼロは独り言のように言うと、ポーチから赤いボトルを取り出しキャップを開ける。

喉をゴクリと鳴らし、ボトル1本飲み干した。それに続きレイも同じものを飲む。

「やっぱ温まるな~雪山はこれに限るな。」

また独り言のように呟くと、ゼロは皆に続いて高い段差をよじ登る。


4人は人がすれ違うこともできないような狭い穴を抜ける。

そこは先ほどより大きな穴が縦に開いていたが、目を慣らすのに時間がかかるようなうす暗さだった。

ひんやりとした空気のなかに、3頭のギアノスがいた。

ギアノスとは、一言で言ってしまえば鳥類種に属するランポスの亜種だ。

しかし、生息場所、能力等、様々な点でランポスとは相違している。

雪山に多く生息するため、長い適応進化により、雪上、氷上でも目立たない白い外皮を持つ。

また、口から氷液を吐きかけることで敵の動きを封じる、という独特の能力も持っている。

またドスランポスと同様、群れを携えるドスギアノスというボスも存在する。


最初に動きを見せたのはレイだった。

ギアノスはまだこちらには気付いていない。

レイはその静寂を破らずに、弓を結びつけたベルトのジョイントを外す。

「・・・・・レイ、殺らなくていい・・・群れにもなっていないようだから・・」

ジンの制止の手に、レイは小さな笑みを作って弓を担ぎなおした。

「避ければ放って置いても・・どおってこと無いからな。」

足音を立てないよう、透き通った氷の4人は走り出した。


細く強靭な足で大きく跳躍するギアノス。

空を裂くその尖鋭で長い牙と爪を、それ以上のスピードで避ける4人。

「じゃあな。」

ゼロが最後に一言、洞窟を出るときに放った。

自分たちに攻撃してこないハンターに唖然とするギアノスたちだった。



「うわっ・・・!!」

吹雪いていた。

目を開くこともままならないような吹雪。

北方に近いこの雪山では、気候の変動が激しいため吹雪は珍しくない。

しかし、そこには雪獅子ドドブランゴどころか、その手下のブランゴの姿すら見られない。

「凄い吹雪だな・・・!でも、ここには居ないとすると」

どこだ、という前に、ジンはポーチから『千里眼の薬』を取り出す。

喉を通る独特な味に、ジンは吐き気がした。

が、それ以上にいつもと違う感覚に驚きを隠せなかった。

「こ・・れは・・・・・“雪獅子の”とは・・違うような・・・」

「え!?」

「甲殻種の・・・感じだ・・・」



Chapter5-3『異質な気配』に続く
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