2007.03.14
自作小説『Andante 歩くような速さで』③

押してくだちい
『メール』
司(つかさ)はよく友達から『変な野郎』と言われることが多い。
一言で形容してしまうなら『ネバい』。そして『鈍い』。変なキャラ。
頭はハードワックスの量を半端無く付け、無造作にツイストを作っている。
自分で自分の髪をすくくらいはでき、いつも同じような微妙な髪型。
いろんな意味で『ネバく』、『鈍い』男だった。
中学のときやっていた剣道を「めんどくせー」と辞めた。
身長も無駄に180近くありいろんな意味でネバかった。
2006年。高校1年も折り返しの後期中間試験が終わった頃。
秋良(あきら)が司に突然言った。
「なぁ、お前さ。なんか俺の中学のタメが男紹介してくれって言いよるんやけど、どう?」
「えぇ・・俺?なんで俺?」
「やって、お前以外ほとんど彼女おるやん、ツレは。どうよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ま、一応紹介して。」
「おう!んじゃお前のメアド教えるわ!写メも送るぞ?」
「うん。って写メはやめろや!!」
その夜、その娘からメールが来た。
『こんばんわぁ!!澤田明希(あき)って言うンやけど』
ギャル文字は少ないが、絵文字がかなり多い。1文の最後に4個くらいついている。
『あ、秋良が言ってた。』
『じゃあ、メールしてもええんやぁ!坂田司くんって言うン?司ってかっこええなぁ!!』
『いや、かっこよくないよ・・』
『かっこいいよ!笑 つかさくんって呼んだらええかなぁ?』
『あー、うん。なんでも好きに呼んでええよ笑 それじゃ、えーと・・・俺はなんて呼べばエェかな・・?』
『あたしもなんでもエェよ!好きに呼んで。明希とかでも!』
こう言われると、逆にどう呼べばいいのか迷う。
自分がどんなに相手が困るような質問をしてるのだろう、とやっと気づいた。
『それじゃ澤田さんで笑』
それからメールは続いた。授業中、通学中、夜。
友達に紹介してもらってメールする・・・なんてことは初めてだったが、司は楽しかった。
ピローン♪
携帯の写メの音。
司は数秒たってやっと、自分が撮られたことに気がついた。
「おまっ・・なに勝手に撮ってんだよ!」
司は秋良の携帯を奪おうとする。
「いやな、前、お前の写メ送ったじゃん。なんかよくわかんねぇからもう1枚くれって・・」
奪い取った携帯には、馬鹿笑いする司の姿。そして秋良はすかさず保存ボタンを押す。
「あっ・・!おまっ!!消せや!」
「ええけん送らせろや!!あ、そうや、向こうの写メもやるわ。」
「はぁ?送るなよ!!やめろって!!」
「送らせんと、向こうの写メやらんぞ?」
秋良は軽く脅しに出た。
「はい・・・・送ってください。」
秋良から貰った写メには、2人の女子が写っていた。
「おいまさか右とかじゃないよな?」
「お前、酷いこと言うな~(笑)。右やで。」
「はぁ!?」
「嘘やって(笑)。左や。な?メールして正解やったやろ?」
「はい・・・ありがとうございます・・・(笑)」
それから、本格的に学生祭の準備が始まり、執行委員だった司はなかなか暇が無く明希とも遊ぶことができなかった。
そして、学生祭当日がやってきた。
『行くよ!絶対 あたしお菓子とか作るン好きやから、何か持って行ってあげる!』
『来てくれたらそれで嬉しいし、別に構わんよ?』
『ありがと!あ、でも俺、学生祭執行委員やし、忙しくて会えんかも。』
『どこにいるか言ってくれたら、絶対顔出すよ!!』
メールを始めて、1ヶ月。学生祭は、司の誕生日の1週間前。
それまで、司は明希と会ったことがなかった。
午後8時前。次第に冷え込んできた。もう空は冬の闇の色だった。
『本夜祭』という学生祭で最も楽しく盛り上がる企画の間も、執行委員に休みは無い。
司は学校の門で、送迎バスや他の車の誘導に励んでいた。
「あー・・・暇やな~・・・」
自然にもれた、独り言。
「こんばんわ!」
司が後ろを振り向くと、そこには写メの娘が立っていた。
「司くん?やんね?」
「あ・・・うん、澤田さん?」
結局照れてしまい、2人はあまり喋れなかった。
最後に送迎バスに乗り込む明希が、司に手を振った。
司も振り返す。
それから、なぜか明希からのメールは次第に少なくなっていった。
司も、だんだんとメールを送ることを止めていった・・・
「俺、なんか嫌なこと言っちまったかな・・・」
司(つかさ)はよく友達から『変な野郎』と言われることが多い。
一言で形容してしまうなら『ネバい』。そして『鈍い』。変なキャラ。
頭はハードワックスの量を半端無く付け、無造作にツイストを作っている。
自分で自分の髪をすくくらいはでき、いつも同じような微妙な髪型。
いろんな意味で『ネバく』、『鈍い』男だった。
中学のときやっていた剣道を「めんどくせー」と辞めた。
身長も無駄に180近くありいろんな意味でネバかった。
2006年。高校1年も折り返しの後期中間試験が終わった頃。
秋良(あきら)が司に突然言った。
「なぁ、お前さ。なんか俺の中学のタメが男紹介してくれって言いよるんやけど、どう?」
「えぇ・・俺?なんで俺?」
「やって、お前以外ほとんど彼女おるやん、ツレは。どうよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ま、一応紹介して。」
「おう!んじゃお前のメアド教えるわ!写メも送るぞ?」
「うん。って写メはやめろや!!」
その夜、その娘からメールが来た。
『こんばんわぁ!!澤田明希(あき)って言うンやけど』
ギャル文字は少ないが、絵文字がかなり多い。1文の最後に4個くらいついている。
『あ、秋良が言ってた。』
『じゃあ、メールしてもええんやぁ!坂田司くんって言うン?司ってかっこええなぁ!!』
『いや、かっこよくないよ・・』
『かっこいいよ!笑 つかさくんって呼んだらええかなぁ?』
『あー、うん。なんでも好きに呼んでええよ笑 それじゃ、えーと・・・俺はなんて呼べばエェかな・・?』
『あたしもなんでもエェよ!好きに呼んで。明希とかでも!』
こう言われると、逆にどう呼べばいいのか迷う。
自分がどんなに相手が困るような質問をしてるのだろう、とやっと気づいた。
『それじゃ澤田さんで笑』
それからメールは続いた。授業中、通学中、夜。
友達に紹介してもらってメールする・・・なんてことは初めてだったが、司は楽しかった。
ピローン♪
携帯の写メの音。
司は数秒たってやっと、自分が撮られたことに気がついた。
「おまっ・・なに勝手に撮ってんだよ!」
司は秋良の携帯を奪おうとする。
「いやな、前、お前の写メ送ったじゃん。なんかよくわかんねぇからもう1枚くれって・・」
奪い取った携帯には、馬鹿笑いする司の姿。そして秋良はすかさず保存ボタンを押す。
「あっ・・!おまっ!!消せや!」
「ええけん送らせろや!!あ、そうや、向こうの写メもやるわ。」
「はぁ?送るなよ!!やめろって!!」
「送らせんと、向こうの写メやらんぞ?」
秋良は軽く脅しに出た。
「はい・・・・送ってください。」
秋良から貰った写メには、2人の女子が写っていた。
「おいまさか右とかじゃないよな?」
「お前、酷いこと言うな~(笑)。右やで。」
「はぁ!?」
「嘘やって(笑)。左や。な?メールして正解やったやろ?」
「はい・・・ありがとうございます・・・(笑)」
それから、本格的に学生祭の準備が始まり、執行委員だった司はなかなか暇が無く明希とも遊ぶことができなかった。
そして、学生祭当日がやってきた。
『行くよ!絶対 あたしお菓子とか作るン好きやから、何か持って行ってあげる!』
『来てくれたらそれで嬉しいし、別に構わんよ?』
『ありがと!あ、でも俺、学生祭執行委員やし、忙しくて会えんかも。』
『どこにいるか言ってくれたら、絶対顔出すよ!!』
メールを始めて、1ヶ月。学生祭は、司の誕生日の1週間前。
それまで、司は明希と会ったことがなかった。
午後8時前。次第に冷え込んできた。もう空は冬の闇の色だった。
『本夜祭』という学生祭で最も楽しく盛り上がる企画の間も、執行委員に休みは無い。
司は学校の門で、送迎バスや他の車の誘導に励んでいた。
「あー・・・暇やな~・・・」
自然にもれた、独り言。
「こんばんわ!」
司が後ろを振り向くと、そこには写メの娘が立っていた。
「司くん?やんね?」
「あ・・・うん、澤田さん?」
結局照れてしまい、2人はあまり喋れなかった。
最後に送迎バスに乗り込む明希が、司に手を振った。
司も振り返す。
それから、なぜか明希からのメールは次第に少なくなっていった。
司も、だんだんとメールを送ることを止めていった・・・
「俺、なんか嫌なこと言っちまったかな・・・」
スポンサーサイト
2007.03.14
自作小説『Andante 歩くような速さで』②

押してくだちい
『クロスオーバー』
聡一郎(そういちろう)は、中学から始めたバスケを、高校でも続けようとバスケ部に入部した。
しかし、「自分に合わない」と言う理由で、すぐに幽霊部員になってしまった。
聡一郎は、どこにでも、そのクラスにも1人はいそうな明るいヤツ。
テンションが低いときのほうが珍しい。それくらい明るいヤツだった。
それが裏目に出て時にはウザがられたりすることもあったが、それでもいつもクラスのムードメーカーといった感じだ。
そして、バスケはかなりの上手さだ。
ワンonワンで聡一郎を止めることのできるヤツはいないし、抜くことのできるヤツもいない。
聡一郎の『クロスオーバー』には運動神経のいい野球部のヤツらも反応できなかった。
クロスオーバーとは、名の通り相手に相対したときに素早く対角で動くように抜き去る技だ。
そんな聡一郎は、やはりモテた。
中学のときは4人、付き合っていた。
高1から引き続き、聡一郎と司(つかさ)、そして悠(ゆう)は2年になっても学生祭の執行部員になった。
聡一郎と司が学生会室に行くと、誰もいなかったので待つことにした。
司がパソコンをいじっていると、聡一郎が突然切り出した。
「なぁ、司。お前彼女とかいた?」
「あ、ああ・・・お前は?」
「へっへ~~、俺やなぁ、今まで4人も付き合ったわ!!」
「へぇ・・」
「『へぇ』って・・最初のヤツが4日。次が1ヶ月、その次が8日、最後が2ヶ月で別れたけどな!」
聡一郎は笑いながら言う。
「へぇ。倍になってるのか。じゃあ次は8日の倍で16日か。頑張れよ」
聡一郎の笑いが止まる。
「うっせーーー次は2年は付き合ってやるわ!!見とけよ!!」
これが、今年の5月の話。
聡一郎は、それから1ヵ月後の6月3日、1年生の後輩に告白した。
聡一郎は誰とでも、たとえ初対面の相手でも話せる男だったため、学生祭の1年生ともすぐに打ち解けていた。
そのためか、この1年生にもOKされた。
ボブかセミロングの、爽やかな感じの娘。ぱっちりした目は、誰が見ても明るい印象を受ける。
「おっしゃ見とれよ!司!!16日以上付き合ってやるわ!!」
「うん、頑張れよ。」
「反応薄いな・・・」
それから次の日曜日、2人はとりあえず遊ぶことになった。
聡一郎の感想は、「楽しかった。」
それから、聡一郎は会議や集まりがないときにも学生会室に向かうようになった。
彼女がよく、意味もなく学生会室にいると聞いたからだ。
勉強にはあまり自信があるわけではない聡一郎だったが、1年生の内容なら教えられたので、よく一緒に勉強もしていた。
次の休みの日も、2人は遊んだ。
聡一郎のテンションは、日に日に増していった。
だれもついていけないくらいに・・・・
6月18日。
「おい司!!今日で16日やぞ!!俺の勝ちか?何おごってくれる?」
「いやいやおごるとか言ってねぇし・・」
「てめーおごれよ!からあげくんなぁ!!」
「まぁ、お前が後2週間、合計1ヶ月付き合ったらなんかおごってやるわ。」
「言ったな?約束やぞ!!」
6月20日。
聡一郎は、突然別れた。ふられたらしい。
今まで最高頂にまで上がっていたテンションは、割れた風船みたいに一気にしぼんだ。
「18日か~。ま、俺の言ったとおりだったろ?」
「うっせー・・・」
それから2時間後。
聡一郎のテンションはいつものように戻っていた。
それから、夏休み前になって聡一郎はバスケ部に顔を出すようになった。
クロスオーバー。
相手に触れ、近づくのは一瞬の話。
聡一郎(そういちろう)は、中学から始めたバスケを、高校でも続けようとバスケ部に入部した。
しかし、「自分に合わない」と言う理由で、すぐに幽霊部員になってしまった。
聡一郎は、どこにでも、そのクラスにも1人はいそうな明るいヤツ。
テンションが低いときのほうが珍しい。それくらい明るいヤツだった。
それが裏目に出て時にはウザがられたりすることもあったが、それでもいつもクラスのムードメーカーといった感じだ。
そして、バスケはかなりの上手さだ。
ワンonワンで聡一郎を止めることのできるヤツはいないし、抜くことのできるヤツもいない。
聡一郎の『クロスオーバー』には運動神経のいい野球部のヤツらも反応できなかった。
クロスオーバーとは、名の通り相手に相対したときに素早く対角で動くように抜き去る技だ。
そんな聡一郎は、やはりモテた。
中学のときは4人、付き合っていた。
高1から引き続き、聡一郎と司(つかさ)、そして悠(ゆう)は2年になっても学生祭の執行部員になった。
聡一郎と司が学生会室に行くと、誰もいなかったので待つことにした。
司がパソコンをいじっていると、聡一郎が突然切り出した。
「なぁ、司。お前彼女とかいた?」
「あ、ああ・・・お前は?」
「へっへ~~、俺やなぁ、今まで4人も付き合ったわ!!」
「へぇ・・」
「『へぇ』って・・最初のヤツが4日。次が1ヶ月、その次が8日、最後が2ヶ月で別れたけどな!」
聡一郎は笑いながら言う。
「へぇ。倍になってるのか。じゃあ次は8日の倍で16日か。頑張れよ」
聡一郎の笑いが止まる。
「うっせーーー次は2年は付き合ってやるわ!!見とけよ!!」
これが、今年の5月の話。
聡一郎は、それから1ヵ月後の6月3日、1年生の後輩に告白した。
聡一郎は誰とでも、たとえ初対面の相手でも話せる男だったため、学生祭の1年生ともすぐに打ち解けていた。
そのためか、この1年生にもOKされた。
ボブかセミロングの、爽やかな感じの娘。ぱっちりした目は、誰が見ても明るい印象を受ける。
「おっしゃ見とれよ!司!!16日以上付き合ってやるわ!!」
「うん、頑張れよ。」
「反応薄いな・・・」
それから次の日曜日、2人はとりあえず遊ぶことになった。
聡一郎の感想は、「楽しかった。」
それから、聡一郎は会議や集まりがないときにも学生会室に向かうようになった。
彼女がよく、意味もなく学生会室にいると聞いたからだ。
勉強にはあまり自信があるわけではない聡一郎だったが、1年生の内容なら教えられたので、よく一緒に勉強もしていた。
次の休みの日も、2人は遊んだ。
聡一郎のテンションは、日に日に増していった。
だれもついていけないくらいに・・・・
6月18日。
「おい司!!今日で16日やぞ!!俺の勝ちか?何おごってくれる?」
「いやいやおごるとか言ってねぇし・・」
「てめーおごれよ!からあげくんなぁ!!」
「まぁ、お前が後2週間、合計1ヶ月付き合ったらなんかおごってやるわ。」
「言ったな?約束やぞ!!」
6月20日。
聡一郎は、突然別れた。ふられたらしい。
今まで最高頂にまで上がっていたテンションは、割れた風船みたいに一気にしぼんだ。
「18日か~。ま、俺の言ったとおりだったろ?」
「うっせー・・・」
それから2時間後。
聡一郎のテンションはいつものように戻っていた。
それから、夏休み前になって聡一郎はバスケ部に顔を出すようになった。
クロスオーバー。
相手に触れ、近づくのは一瞬の話。
2007.03.14
自作小説『Andante 歩くような速さで』①

押してくだちい
『波の模様』
悠(ゆう)は、始まって3ヶ月以上も経った高校生活に、まだ不安を感じていた。
自分が中学のときやっていた部活を辞め、明らかにだらけた生活を送っていることも分かっていた。
しかし何もやる気が出ない。入学当初の意気込みはとっくに消えてなくなっていた。
不安と怠惰が入り混じれて、なんともいえない嫌気がさしていた。
悠の友達は、特別多くも少なくも無い。普通の高校生だから、友達も普通。女友達も少なからずいる。
もちろん友達の、「あいつマジかわいいわ!」とか「お前、告れよ」とかいうバカっぽい話はよく聞いた。
悠の中学から、悠と同じ高校に入ったヤツは少なかった。
悠はそのことにも不安があったのだが、入学説明会のときに偶然前後の席になった司や聡一郎をはじめ、すぐに友達は増えた。
悠は悪く言えばノリが悪い、良く言えばツッコミ系で冷めたキャラ。
どこかいつも冷静。笑いはするのだがバカみたいには笑わない。
服も、レザー系のネックレスやダークな服を着ることが多かった。
悠は女の子と話すのが、少しだけ苦手だった。
過去のこともいろいろあったようで、女の子を凝視して話するのが苦手だった。
もちろん、変な意味での『凝視』ではない。
悠が入学して、最初は席は出席番号順。隣は男だった。
そして1度目の定期テストの終了と同時に行われる席替え。
隣は、瑞希(みずき)という女子だった。
ストレートのレングス。ほとんど度の入っていない黒ぶち眼鏡。
レモンティーが好きなのか、朝は放課後によく机の上にはレモンティーが置いてある。
そして瑞希は悠と中学が違ったのだが、初めて話す瑞希とはなぜか不思議と話があった。
悠が話を聞くことが得意、つまり聞き上手な性格だったためだろうか。
それに、悠は40人のクラスでもかなり頭のいいほうだったこともあるだろう。
それに比べ瑞希は、良くもなく悪くもない。頭のよさは普通。クラスで真ん中くらい。
「なぁ、メアド教えてよ。」そういったのは、瑞希だった。
ウチの学校は不思議と校則も軽い。ピアスや髪を染めるのはさすがに禁止だが、女子はよく髪を染めていたほどだ。
もちろん携帯もアリ。ゲーマーのヤツらは授業中ですらゲームをしていることもあった。
それから、悠と瑞希はメールするようになった。
最初は「宿題分からん教えて」とか言うような内容が多かったのだが、しだいにいろんな話をしだした。
そして、夏休みに入る直前、悠は瑞希の電話番号を訊いてみた。意外にも軽く教えてくれた。
「え~?マジ?あいつ3年の○○さんと付き合ってんの?」
「あ、でもそういえば、△△って大学生と付き合いよん?やって車持っおるんやろ?彼氏・・・」
夏休みに入って、悠は俺と一緒に、バスケ部の聡一郎の家に遊びに行った。
バスケ部にもかかわらず、1年の初めですでに幽霊部員。聡一郎はそんなのだけど憎めないヤツだった。
そこで悠は、自分が瑞希のことを気になっていることを司と聡一郎に言った。
「お前なら大丈夫じゃね~?俺、瑞希と中学一緒やけど、アイツはまぁ普通にかわいいよな。」
聡一郎の茶化しに、悠は照れた。
悠はその2週間後、8月も始まったばかりのころ、瑞希と付き合いだした。
中学の頃を通して、2人と付き合った悠だが、そのどちらもがギクシャクしたまま別れていた。
自分がヘたれなことも、悠には分かっていた。
最初に遊んだ日、瑞希は悠にこう訊いた。
最初に遊んだといっても、俺と悠は学生祭の執行委員になったせいで、悠と瑞希がはじめて遊んだのは2学期が始まってからのことだった。
「なぁ、悠は誕生日いつ?」
「へ?あ、12月・・・3日。瑞希はいつなん?」
「ウチ?ウチは4月、4月15日。もうとっくに終わったよ。あ、てかもうすぐやん。」
「あと2ヶ月もあるけど・・・あ、てかなんかくれるん?」
自分でもこんなキャラじゃない、と思いつつ、悠は瑞希の反応を待った。
「へへへ、ウチなぁ、夏休みからバイト始めたんよ。やけん、ホンマなんかあげるわ!」
「ええよ、気ぃつかわんで。」
そして、悠の誕生日の1週間前。
「なんでもええけん遠慮せんといてよ~!」
男が遠慮するのは当たり前だ。悠はどこか恥ずかしくなった。
「え~でも、やっぱええって。気ぃつかわんでええってホンマに。」
「ええけん早、なんか選んでよ!!」
適当に店の中を回りながら、悠は苦悩した。
「じゃ、これで・・・」
悠が選んだのはいかにも安そうなリングだった。
「へ~!?こんなんがええん?」
「あ・・・いや・・・・・・・・・」
「じゃあ、ウチの誕生日にもなんかプレゼントしてよなっ!!」
「うん。分かった。」
悠の指には・・・
銀色に、波の模様が彫られたリング。2千円もしない、どこにでも売っていそうなリング。
悠は、仕方なく選んだはずのそのリングがとてもきれいに見えた。
それから1ヶ月。悠はいろいろなことが身の周りにおき、それを引きずったまま学校でも塞ぎ込んでいた。
俺や聡一郎の「どうしたんや」「大丈夫かよお前」という言葉も、悠には意味が無かった。
そして、瑞希の言葉も・・・
1月に入ってまもなく、2人は別れた。
瑞希は他のヤツに告られ、付き合いだした。
悠はしだいに、前のように振舞うようになった。
別れたけど、それでも、今も2人は友達。
悠の指には、あのときのリングが輝いていた。
悠(ゆう)は、始まって3ヶ月以上も経った高校生活に、まだ不安を感じていた。
自分が中学のときやっていた部活を辞め、明らかにだらけた生活を送っていることも分かっていた。
しかし何もやる気が出ない。入学当初の意気込みはとっくに消えてなくなっていた。
不安と怠惰が入り混じれて、なんともいえない嫌気がさしていた。
悠の友達は、特別多くも少なくも無い。普通の高校生だから、友達も普通。女友達も少なからずいる。
もちろん友達の、「あいつマジかわいいわ!」とか「お前、告れよ」とかいうバカっぽい話はよく聞いた。
悠の中学から、悠と同じ高校に入ったヤツは少なかった。
悠はそのことにも不安があったのだが、入学説明会のときに偶然前後の席になった司や聡一郎をはじめ、すぐに友達は増えた。
悠は悪く言えばノリが悪い、良く言えばツッコミ系で冷めたキャラ。
どこかいつも冷静。笑いはするのだがバカみたいには笑わない。
服も、レザー系のネックレスやダークな服を着ることが多かった。
悠は女の子と話すのが、少しだけ苦手だった。
過去のこともいろいろあったようで、女の子を凝視して話するのが苦手だった。
もちろん、変な意味での『凝視』ではない。
悠が入学して、最初は席は出席番号順。隣は男だった。
そして1度目の定期テストの終了と同時に行われる席替え。
隣は、瑞希(みずき)という女子だった。
ストレートのレングス。ほとんど度の入っていない黒ぶち眼鏡。
レモンティーが好きなのか、朝は放課後によく机の上にはレモンティーが置いてある。
そして瑞希は悠と中学が違ったのだが、初めて話す瑞希とはなぜか不思議と話があった。
悠が話を聞くことが得意、つまり聞き上手な性格だったためだろうか。
それに、悠は40人のクラスでもかなり頭のいいほうだったこともあるだろう。
それに比べ瑞希は、良くもなく悪くもない。頭のよさは普通。クラスで真ん中くらい。
「なぁ、メアド教えてよ。」そういったのは、瑞希だった。
ウチの学校は不思議と校則も軽い。ピアスや髪を染めるのはさすがに禁止だが、女子はよく髪を染めていたほどだ。
もちろん携帯もアリ。ゲーマーのヤツらは授業中ですらゲームをしていることもあった。
それから、悠と瑞希はメールするようになった。
最初は「宿題分からん教えて」とか言うような内容が多かったのだが、しだいにいろんな話をしだした。
そして、夏休みに入る直前、悠は瑞希の電話番号を訊いてみた。意外にも軽く教えてくれた。
「え~?マジ?あいつ3年の○○さんと付き合ってんの?」
「あ、でもそういえば、△△って大学生と付き合いよん?やって車持っおるんやろ?彼氏・・・」
夏休みに入って、悠は俺と一緒に、バスケ部の聡一郎の家に遊びに行った。
バスケ部にもかかわらず、1年の初めですでに幽霊部員。聡一郎はそんなのだけど憎めないヤツだった。
そこで悠は、自分が瑞希のことを気になっていることを司と聡一郎に言った。
「お前なら大丈夫じゃね~?俺、瑞希と中学一緒やけど、アイツはまぁ普通にかわいいよな。」
聡一郎の茶化しに、悠は照れた。
悠はその2週間後、8月も始まったばかりのころ、瑞希と付き合いだした。
中学の頃を通して、2人と付き合った悠だが、そのどちらもがギクシャクしたまま別れていた。
自分がヘたれなことも、悠には分かっていた。
最初に遊んだ日、瑞希は悠にこう訊いた。
最初に遊んだといっても、俺と悠は学生祭の執行委員になったせいで、悠と瑞希がはじめて遊んだのは2学期が始まってからのことだった。
「なぁ、悠は誕生日いつ?」
「へ?あ、12月・・・3日。瑞希はいつなん?」
「ウチ?ウチは4月、4月15日。もうとっくに終わったよ。あ、てかもうすぐやん。」
「あと2ヶ月もあるけど・・・あ、てかなんかくれるん?」
自分でもこんなキャラじゃない、と思いつつ、悠は瑞希の反応を待った。
「へへへ、ウチなぁ、夏休みからバイト始めたんよ。やけん、ホンマなんかあげるわ!」
「ええよ、気ぃつかわんで。」
そして、悠の誕生日の1週間前。
「なんでもええけん遠慮せんといてよ~!」
男が遠慮するのは当たり前だ。悠はどこか恥ずかしくなった。
「え~でも、やっぱええって。気ぃつかわんでええってホンマに。」
「ええけん早、なんか選んでよ!!」
適当に店の中を回りながら、悠は苦悩した。
「じゃ、これで・・・」
悠が選んだのはいかにも安そうなリングだった。
「へ~!?こんなんがええん?」
「あ・・・いや・・・・・・・・・」
「じゃあ、ウチの誕生日にもなんかプレゼントしてよなっ!!」
「うん。分かった。」
悠の指には・・・
銀色に、波の模様が彫られたリング。2千円もしない、どこにでも売っていそうなリング。
悠は、仕方なく選んだはずのそのリングがとてもきれいに見えた。
それから1ヶ月。悠はいろいろなことが身の周りにおき、それを引きずったまま学校でも塞ぎ込んでいた。
俺や聡一郎の「どうしたんや」「大丈夫かよお前」という言葉も、悠には意味が無かった。
そして、瑞希の言葉も・・・
1月に入ってまもなく、2人は別れた。
瑞希は他のヤツに告られ、付き合いだした。
悠はしだいに、前のように振舞うようになった。
別れたけど、それでも、今も2人は友達。
悠の指には、あのときのリングが輝いていた。
| Home |